お墓に眠る故人の、生きた証を刻むこの仕事はとても崇高で、わたしにとっては大変魅力あるものです。
ただ、石材業界はどこも人手不足。
職人は高齢化し、担い手は少なく、辞めていく人も多いという厳しい現実があります。
現場での彫刻は、天候や気候に左右され思うように作業が捗らない日もあります。
それでも、お墓はただ優しく季節の中にあります。
空の青さ、木々の眩しい緑、虫の羽音。自然の全てが故人を優しくつつみこむ美しさがあります。
「この仕事を伝えていきたい」
ある時から強くそう思うようになりました。
こんなにも素晴らしい仕事であるにもかかわらず、担い手がいないことは、この仕事の素晴らしさを伝えきれていない自分たちに責任があると思いますし、人手不足の原因は、職人が育っていない事や職人の置かれる環境に問題があると考えます。
仕事を依頼する時も、受ける時もフェアでありたい。そして、強い意志と勇気と確かな技術力を持った職人を育てたい。
…そんなことを考えながらも、日々の忙しさを言い訳に前進することができていませんでした。
挑戦をすることはいくつになっても勇気がいるものです。
40代半ばにして、この業界にかける想いをしっかりと形あるものにしていくために動きます。
全国にある石材店の二代目三代目さん、石材店から独立を目指す職人さん、新たに現場彫りを学びたいと考えている方の為の石彫アカデミーを、小さいながら始めていきます。
石啓は市内で最も小さな店舗の石材業者です。しかし、この業界への期待や未来への希望は誰よりも大きいと自負しています。
わたしが老舗石材店から現場彫りの職人として独立を決めた時、揶揄されたり笑われたことがありました。「石材店はお墓を建ててこそ経営が成り立つ、彫刻だけでは食べていけない」という考えを持つ人が当時多かったからです。
石彫アカデミーも、認知されるまで時間がかかるかもしれません。
でもわたしには、お墓の文字彫刻専門店として今日までやってきた経験と自信があります。
わたしのミッションは、お客さんがお墓を守るお手伝いをすること、そして実力を備えた職人を育てることです。
これから仕事を探す人からも、お客さんからも選ばれる仕事がしたいと強く思います。